家族で訪れたい和紙の里 小川町

国の重要無形文化財にも指定されている「細川紙」

小川和紙の起源は古く、8世紀の頃と伝えられていますが、紙の産地として栄えたのは江戸時代に入ってから。一大消費地となった江戸に近いこともあり、大量の和紙がすかれ、江戸へと運ばれていきました。

和紙が天日干しにされていた当時、天候に恵まれると、大量の和紙ができ、商売繁盛したことから、「ぴっかり千両」という言葉が生まれたのだとか。なかでも「細川紙」と称された楮紙は、独特の技術と、丈夫で素朴な特性があいまって、代表的な和紙として知られるようになりました。その丈夫さは、明治以降、戸籍などの保存性が求められる公文書用紙にも選ばれたほどです。

戦後、洋紙の普及と機械化によって、産業としては衰退した小川和紙ですが、今日でも手すき和紙業者13名が「細川紙技術保持者」として昔ながらの和紙づくりを行っており、国の重要無形文化財の指定を受けています。

埼玉伝統工芸会館で和紙づくりを体験

そんな伝統ある和紙づくりが体験できるのが、埼玉伝統工芸会館。細川紙技術保持者である島野元彦さんの指導のもと、和紙をすき、ちぎり絵はがきづくりなどに挑戦すれば、家族のよい思い出となることでしょう。

和紙を1枚すくのにかかる時間は、1、2分程度。すいた和紙を乾かしながら、好きな絵柄を入れていきます。編集部が取材に訪れたときも、20組のご家族が和紙づくりを楽しんでおられましたが、短時間で気軽に貴重な体験ができるため、人気観光スポットになっているようです。

埼玉伝統工芸会館は、小川和紙だけでなく埼玉県内の伝統的手工芸品20産地30品目が常時展示されており、併設の「工芸の里物産館」で、工芸品・銘酒・漬物・お菓子などのお土産を買うこともできます。和紙製品はじめ、暮らしに取り入れる「和」のアイテムを物色する、格好の場といえるでしょう。

見どころ満載の「武蔵の小京都」

小川町の魅力は、「和紙づくり体験」だけではありません。

古い建物や史跡が数多く残る街並みは、「武蔵の小京都」とも呼ばれ、駅を出て目に飛び込んでくるこぢんまりとした景観は、どこかなつかしく、ほっとするもの。街には作り酒屋が3件あり、秩父山系の良質の水と酒造に適した気候を活かした酒づくりが行れています。

そして、古い市街地区域を抜けると、槻川の清流と秩父の山々に囲まれた田園風景が広がり、昔ながらに和紙を天日干しする風景を見ることもできます。

このほか、国の登録有形文化財に指定されている割烹旅館「二葉本店」に足を運べば、見事な日本庭園を目に楽しみながら、日本五大飯のひとつ「忠七めし」に舌鼓を打つもよし。仙元山・見晴らしの丘公園で、お子さんと全長203mのローラーすべり台でアウトドア気分を満喫するもよし。数ある関東の日帰り温泉で3年連続1位に選ばれた「花和楽の湯」で天然温泉を楽しむもよし。

小川町は、ご家族で一日たっぷり楽しめる街なのです。

「和紙のよさを多くの人に伝え未来へと伝承したいですね」

私たち和紙職人は、昔ながらの技術を伝承しながら、小川和紙を作り続けていますが、その良さは、日本だけでなく世界の多くの人に認められており、芸術家やクリエイターなどによって、和紙スタンドなどさまざまな用途の素材として、拡がってきています。

和紙は、そこに含まれる物質や微生物の働きのおかげで身体にもよいと言われており、九州からいらっしゃった方が和紙のタペストリー(※)を購入していかれ、お子さんの花粉症が治まったと感謝のお手紙をいただいたこともあります。

自然と親しむ日本の風土・文化に育まれた和紙のすばらしさを、多くの方に知っていただき、生活に取り入れていただければと思いますね。

(※)タペストリー:壁かけなどの室内用装飾

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