埼玉で気軽に音楽を体験

リトミックで健やかな成長を

リトミックは、皇太子妃雅子様が愛子様の教育方法の一つとしてとりいれたことや、
知的障害の治療法として、その名を知られるようになりました。
リトミックという名前をご存知の方は多いでしょうが、
実際のところどのようなことをするのか、どのような効能があるのか、
それを正確に認知している方は少ないのではないでしょうか。
今回、さいたま市でリトミック教育に取り組んでいる
「森の音楽教室」の武笠玲央先生にリトミック教育について、お話を伺いました。

リトミックってなに?

リトミックとは、スイスの音楽教育家であり、作曲家でもあったエミール・ジャック=ダルクローズが編み出した音楽教育法です。ダルクローズは音楽大学での講義を通して、生徒たちが頭では理解できていても、思い通りに体を動かすことができず、うまく表現できないことに気づいて、五感以外に「筋肉感覚」があることを提唱し、リズム感を養う教育を推進しました。

「人間が一定の速度で歩いたりすることが出来るのだから、身体の中にあるリズム感覚を鍛える事によって、音楽の中でのリズム感覚も鍛える事が出来るのではないか」と、生徒たちを裸足にし自由に歩かせ、ピアノで伴奏をつけたりしたそうです。

こうして、ダルクローズの試行錯誤の結果、発案されたのが「リトミック」です。当初はなかなか世の中に理解してもらえなかったリトミックも、今ではヨーロッパでは一般的な指導法であり、ダルクローズの功績も高く評価されています。
リトミックは、自発性と反射性、精神の集中力と記憶力、創造力など、様々な能力の育成を目的としたリズム教育です。その特質が、あらゆるジャンルに取り入れられ、芸術音楽のみならず、舞踊、演劇、幼児教育など多方面にわたり、活用されていきました。

リトミックが日本に入って来たのは明治39年のこと。歌舞伎の市川左団次(2世)がロンドンでリトミックを学び、帰国後に設立した「自由劇場」に取り入れたのが最初だと言われています。また「窓ぎわのトットちゃん」(黒柳徹子著/講談社文庫)でも紹介されている小林宗作も、日本にリトミックを伝えた立役者です。彼は大正12年から一年間、パリのリトミック学校に入学し、ダルクローズから直接リトミックを習いました。帰国後、「トモエ学園」を設立し、幼児教育にリトミックを導入。帰国後は現在の国立音楽大学、中学校・高等学校でリトミックの講師として指導にあたりました。

リトミックとおゆうぎの違い

リトミックは、一見「おゆうぎ」と同じように見えます。先生がピアノやカセットなどで音楽を鳴らし、子供たちがそれにあわせて踊ったり、跳ねたり、手を叩いたり。
しかし、実際には全く異なるものだと武笠さんは言います。おゆうぎは、ふりつけが「形」として最初から決められており、子供たちはその通りに動きます。

一方、リトミックでは「音のイメージ」を「体」で表現します。粘土やクレヨン、積み木の代わりに「音」を材料にして、「体」という「楽器」を使って遊んでいきます。音楽から刺激を受け、子供の心の中で「何かをしたい」という気持ちが起こり、先生はその知的活動の手助けをするのです。そして、子供達はレッスンの中で常に新しい試みをし、失敗し、理解をして、様々な体験を通して成長していくのです。ここが、おゆうぎとの大きな違いです。

リトミックで基礎能力アップ

リトミックは、幼児期の音楽教育にも役に立ちます。いきなり楽器を習い始めるよりも、リトミックを経験した後に習い始める方が、ラクに音楽に馴染むことができます。それは、リトミックを通じて音楽の基礎となるリズム感や音の高低を認識する能力などが既に育まれているからです。予め音楽的なセンスが養われていれば、その後、本格的な音楽を始めたときに吸収が早くなるのは当然のことです。音楽を始める土台作りとしては、非常に効果のある方法です。

脳の成長期は、1~6歳と言われています。その時期に、良い刺激を受けることが重要です。1歳でピアノを始めるのは、少し早い気もしますが、リトミックなら早いという事はありません。自然に音楽に親しむことのできる環境を作ることが大切です。

また、リトミックの効果は音楽のみに留まりません。自立心のある、健全でしっかりとした意識を育てる「情操教育」、言語や数、感覚を育てる「知育教育」にも、力を発揮します。反射性や反応力がつくので、スポーツにも役立ちますし、芸術に必要な創造力や想像力も育てられます。その他、日常生活に必要な能力の基礎が、無理なく楽しく身に付いていくのです。

ただ、リトミックは成果が見えにくいものでもあります。楽器などは、やればやったぶんだけ、上達が目に見えて分かりますが、リトミックはそうではありません。しかし、リトミックは子供の基礎能力を伸ばすためのものですから、不安に思う事はありません。知らず知らずのうちに、様々な能力が身についていくのです。
 皆さんのお宅の近くに音楽教室などでリトミックのクラスがあったら、一度お子さまを体験させてみてはいかがでしょうか?

音楽で生活に潤いを

武笠さんは、リトミック以外にも、日常生活の様々な場面で音楽を取り入れています。「BGMは生活の中で、とても重要なもの」と武笠さんは言います。「朝、起きがけにまず曲をかけ、気分を盛り上げます。モーツァルトや、バロック時代の曲が良いですね。目立たないけれども気付くと流れている、そのくらいの音量、存在感が良いと思います。歌もついていない方が良いですね。直接的にではなく、間接的に音楽を楽しむ方法です。リラックス効果があり、物事の効率も上がります」

皆さんも、武笠さんのお話を参考に、音楽を積極的に取り入れてみませんか?きっと、毎日がさらに充実した気分で過ごせるようになるはずです。


武笠玲央(むかさ れお)さん

埼玉県旧浦和市生まれ。桐朋学園「子供のための音楽教室」を経て武蔵野音楽大学卒業。さいたま市浦和区にて森の音楽教室を創立、代表を務める。また、インターネット上のピアノ教室「ピアノを習おう.com」で大人向けピアノ教材開発を手がける傍ら、「行事でつかえるいつでも実践リトミック」「いつでも実践リトミック~春夏秋冬編」(自由現代社)を執筆(共著)。音楽教育家として多彩な活動を展開している。カワイ・クラシックオーディションにて最優秀伴奏賞を受賞。全日本ピアノ指導者協会指導者会員、さいたま市音楽家協会正会員、日本モンテッソーリ協会会員。

♪♪♪森の音楽教室♪♪♪
ニューイヤーコンサート

日時:平成18年1月22日(日) 14:00開演
場所:森の音楽教室内 Aルーム
全席自由:2,000円(先着30名)
【曲目】
モーツァルト「ねぇママ聞いてよ」の主題による変奏曲/モーツァルト ディベルティメント イベール 5つの小品/楽器紹介/オーリック 三重奏曲
前半は生誕250周年のモーツァルトの作品を中心に。後半は近代フランス作品からお届けいたします。
出演:Trio DUHA(トリオ ドゥハ)

※チェコ語で虹という意味です。

  • オーボエ 藤村理子
    昭和音楽大学器楽科卒業。桐朋学園大学研究科修了。オーケストラのエキストラをはじめソロや室内楽で活動。八王子音楽院講師。
  • クラリネット 小坂真紀
    福岡県北九州市生まれ。武蔵野音楽大学卒業。2000年第3回彩の国新進音楽家オーディション(管楽器部門)合格。現在埼玉県立芸術総合高校音楽科非常勤講師。
  • ファゴット 仲原綾子
    沖縄県立芸術大学卒業後、チェコ共和国のプラハ芸術アカデミーに留学。チェコのカルロヴィヴァリ交響楽団に入団。3年間副首席奏者を務める。現在、フリーのファゴット奏者として活躍中。

お問合せ・チケットのお申込み:048-885-9917(森の音楽教室)

リトミックを学んでみたい!

「リトミック研究センター 付属教員養成校」1988年に発足した特定非営利活動法人。
新宿にある本校では、指導者育成コースを昼間・夜間に開講。リズム・ティーチング・キーボートハーモニーなどリトミックの指導に必要な技術・知識を学ぶことが出来る。
養成学校は東京のほかに大阪、名古屋にもあり、数多くのリトミック講師を全国に輩出している。また、養成校以外にも各地に支部があり、埼玉県にある埼玉第1支局では毎月1回、第4週日曜日に彩の国芸術劇場にて研修会を開催している。
リトミック研究センターホームページ
http://www.r-ken.com/

音楽って楽しい!音楽鑑賞教室と子供たち

埼玉県をはじめ、各地の小学校などに出張し、音楽鑑賞教室をしているクラリネット奏者の小坂真紀さん。演奏者の目を通して感じる、子供たちと音楽の関係についてお話をうかがいました。

Q.子供たちの反応は、いかがですか?
A.音楽鑑賞教室は、子供たちにも大好評です。最初のうちは、つまらなさそうな顔をしている子供でも、実際に目の前で楽器を演奏すると、興味津々、表情が一気に変わるのを感じます。
Q.音楽教室はどのような場所で行なっているのですか?
A.最近は、コンサートホールや学校の体育のような広い場所ではなく、日常的な、教室などの狭い空間で行ないます。小さな場所で演奏すると、必然的に演奏者と鑑賞者の距離が近くなりますよね。すぐ目の前で演奏するということは、音だけではなく、視覚でも捉えることになるので、子供たちの興味はますます強くなります。楽器と言うのはあんな形をしているんだな、あの楽器はどんな風にできているんだろう、どうやって綺麗な音を出すんだろう、そんな素朴な興味が、音楽全体への興味への足がかりになると思います。やはり、演奏する者としては、音楽をもっと楽しんでもらい、身近なものだと感じてもらいたいですね。
Q.音楽を通じて、コミュニケーションも図れますね?
A.近頃コミュニケーション不足が問題になっていますが、リトミックは解決策の一つになるのではないかと思います。音を注意深く聴く訓練は、人の話を集中して聴く習慣を身につけることにつながりますし、日常生活の様々な能力を伸ばすことができます。私も「耳をひらく→心をひらく→コミュニケーション力のアップ→楽しい毎日」を目標に、これからも音楽活動をしていきたいと思います。


小坂真紀さん
福岡県北九州市生まれ。武蔵野音楽大学器楽学科卒業。クラリネットを山本正治、木幡仁清の両氏に師事。2000年第3回彩の国新進音楽家オーディション(管楽器部門)合格。2004年より埼玉県立芸術総合高等学校音楽科非常勤講師を勤める。埼玉県内をはじめ各地で小・中学生を対象とした音楽鑑賞教室を行なっている。

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