さな子供からお年寄りまで、世代を超えて親しまれている『うめぼしのうた』は、誰もが口ずさみやすい七・五調の詩。手間暇かけて作られる梅干の人生がユニークに描かれており、酸っぱさや味わい深さまでひしひしと伝わってきます。「苦労はあっても、世の中のために努力していれば報われる」といった、人生の応援メッセージも込められています。
脚光を浴びるきっかけとなったのは、今から約6年前に、鴻巣市の特別養護老人ホーム・翔裕園(しょうゆうえん)で、当時88歳の女性が『うめぼしのうた』を職員に紹介したこと。遠い遠い記憶をたどり、ある時、すらすらと詩を語ったそうです。職員が、作者をあれこれ調べてみました。残念ながら、不明でしたが、明治時代に尋常小学校の教科書に載っていた詩だと判明。ずっと昔から、たくさんの人々に、数え歌のように語り継がれてきたものだったのです。
翔裕園では最初、壁に詩を貼りお年寄り皆で朗読していましたが、いつの頃からか「曲を乗せたら、さらに馴染みやすくなるのでは?」という声が上がり、音楽療法士の本間優子さんが、宮川博之さんに作曲を依頼しました。詞のイメージからは童謡や音頭調の曲を連想しますが、宮川さんは若い職員とお年寄りが一緒に楽しめる歌にしたいと思い、あえてポップス調に仕上げました。緩やかなテンポと穏やかなメロディーは、心を明るくしてくれます。思惑通り、若い人達からも好評なのだそうです。しばらくはテープに録ったものをBGMにしていたのですが、レクリエーション・インストラクターの鈴木マリ子さんにより、曲に合わせて踊る「元気体操」も考案されました。車椅子の方でも取り組めるくらい、無理なく身体を動かせる優しい体操です。
コミやマスコミで紹介されたりしながら、『うめぼしのうた』の人気は、じわじわと高まっていきました。全国からたくさんの問い合わせが来たため、2001年にCD化。カラオケに合わせて踊る「うめぼしのうた元気体操」を収録したビデオも、後に発売されました。
『うめぼしのうた』は、音楽療法セッションにも活用されています。宮川さんと本間さんが日本音楽療法学会関東支部地方会で成果を発表した際には、とても多くの反響がありました。『うめぼしのうた』は今後、音楽療法の分野でもますます注目を集めていくかもしれませんね。
在では、全国各地のさまざまな小学校や保育園、老人ホームなどで『うめぼしのうた』や「元気体操」が活用されています。初めは詩だけだったものに、曲や振り付けを加えたことで、お年寄りだけでなく、子供達にも広まっていったのです。幅広い世代が共に楽しめるコミュニケーションツールとして、『うめぼしのうた』の踊りや歌が後世へと残っていくことが、宮川さんの夢なのだそうです。
ちなみに、カラオケDAMに『うめぼしのうた』が入っています。 曲と体操を覚えたら、皆で踊りながら歌ってエンジョイしましょう。