”頭のいい子”が過ごす夏休みってどんな時間?

いきなり手前みそで恐縮ですが、私はかつて、カリスマ講師でした。最初に教壇に立ったのは高校生のとき。土日、そして夏休みなどの長期休暇に、出身塾の合宿に参加して、後輩たちを教生として指導しました。その後、東大生時代、さらには、文筆業を志して会社を辞めた後、大手進学教室の専任講師やプロ家庭教師として生計を立てていた時期がありました。指導した生徒の数は、3千人以上に及びます。
夏休みになれば、ほとんどの塾が夏期講習や夏期合宿を開きますが、この時期は、学校の行事にわずらわされず、勉強に集中できる年間を通じて唯一の時期といってよいと思います。
しかし、実際に大きく学力を伸ばす子どもがいる一方で、逆に大きく学力を落としてしまう子どももいます。
夏期講習や夏期合宿に同じように参加しているのになぜこれだけハッキリ差が出るのか、それは家での過ごし方しだいであることを、しっかり頭に入れていただきたいと思います。

まず心得ておきたいのは、夏期講習が、教えられるだけ教える場であること、そして問題演習に重点を置く場であることです。
当たり前ですが、塾では、ふだんより時間があるからといって、問題を解かせ、解答・解説を行った後に、「では、もう一度、自分で解いてみよう」などということはしません。時間の限り、次々と問題をこなしていきます。講習を受けるだけでは、消化不良を起こしてしまうのも無理なからぬことなのです。
勉強で大切なのは、やりっぱなしにはせず、復習をきちんとすること。夏休みは、ふだんより多くのことを学び、演習しますから、しっかり復習をやれば、その分、学力が伸びます。しかし、復習しなければ、むしろたくさん詰め込まれた分混乱して、学力が落ちてしまうものなのです。伸びる子、落ち込む子にハッキリ分かれてしまうのは、これが原因といってよいかもしれません。塾に行かせているから大丈夫、というのが一番危険なのです。
次のポイント、それは、夏期講習は40日間、毎日あるわけではないということ。勉強する期間はするが、しないときは全くしない、という危険がいっぱいなのです。
塾で教えていると、お盆休み明けに、休みぼけしている生徒が必ずいます。そういう子は3日くらいはエンジンがかからず、その3日のうちについていけなくなる、ということがけっこう多いものです。
勉強はやった分だけできるようになるものではありません。筋肉と同じで、やらなければ衰えます。伸びるだけでなく、落ちることもあることはついつい見逃されがちですが、学力を落とさない努力をしているかどうかで、大きな差が生まれてしまうものなのです。
たくさん勉強しろとは言いません。毎日、欠かさず30分は勉強することです。それは、机に向かうこととは限りません。流れ星がよく見えたり、遺跡を訪れて歴史を実感したり。夏休みはそうした体験ができる貴重な時間。テーマをもって、毎日、必ず「知的な刺激」を与えることで、”頭のいい子“に育ててやってください。

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