洪水から暮らしを守る、日本随一の国の施設-首都圏外郭放水路って何?

地下観光ブームの中心的存在

 地下の薄暗い場所に、巨大な柱が何本も並び立つ異様な光景。まるで、古代ギリシャのパルテノン神殿のよう竏停・竏停・埼玉県春日部市にある首都圏外郭放水路は、テレビのバラエティ番組で何度も取り上げられているので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。 そういえば、少し前の日経新聞の土曜版で、「今、地下観光がブーム」という記事が掲載されていました。日銀の地下金庫や、東京の地下鉄のふだん電車が走っていないプラットフォーム、そして、この首都圏外郭放水路に、多くの観光客が訪れているのだそうです。これは、埼玉が誇る新名所として、取り上げないわけにはいかないでしょう。  
  首都圏外郭放水路は、いうまでもなく、公共の防災施設で、通常、こうした場所に一般の人が立ち入ることはできないのですが、人々の暮らしを守る国の取り組みとして、積極的に公開が行われている数少ない場所でもあります。ウルトラマンシリーズなど、特撮ヒーロー物の撮影スポットとしても、しばしば使われているそうです。
  ほぼ毎日、見学会は実施されており、2カ月前から見学会の参加申込を、電話またはネットで行うことができます。
 ただし、見学会は、女性スタッフ2名がガイドして回るため、大人数になると、安全対策の目を光らせることができません。このため、1日2回、1回につき20名までと参加人数が限られています。このため、びさいどが取材に訪れた夏休み期間中などは大人気で、予約受付のできる9月まで、予約は満員状態。2カ月前から、あっという間に閉めきられてしまう人気ぶりなのです。
  「首都圏外郭放水路に行ってきたよ」ということになれば、お子さんだって学校の友達に大自慢できそう。めったに体験できない貴重な観光スポットとなっています。 ご興味のある方は、ぜひ、ネットにアクセスして予約、参加してみてはいかがですか?

まるで謎の地下帝国のような、首都圏外郭放水路。

首都圏外郭放水路のホームページ

首都圏外郭放水路のホームページ。予約の他、事前にさまざまな情報をチェックすることができます。

首都圏外郭放水路管理支所 管理係長 鬼頭岳彦さん

国土交通省関東地方整備局
江戸川河川事務所
首都圏外郭放水路管理支所 管理係長
鬼頭岳彦さん

日本だけではなく、世界から注目

 施設を案内していただいた国土交通省地方整備局江戸川河川事務所首都県外各放水路管理支所の管理係長・鬼頭岳彦さんにお話を伺いました。 「首都圏外郭放水路は、中小河川の氾濫により、洪水が多かった春日部を含む中川流域を水害から守るために造られた国の施設です。平成14年の暫定運用開始から2008年6月までに、44回の洪水約7000万トンを取り込んできました。地底に造られた治水効果の高い施設として、日本国内はもちろん、海外からも高い評価を受けています。韓国のテレビ局など、海外のメディアが取材に訪れることも珍しくありません。
  こうした国の取り組みを、国民に伝えるため、首都圏外郭放水路は積極的な広報活動を行っておりますが、テレビなどで取り上げられたこともあって、多くの人が見学に訪れています。地下神殿のような柱が並び立つその景観に興味をもち、「いい勉強になった」と喜んで帰られる子ども達の姿は、私にとっても大きな喜びです。最初は単なる地下景観に対する関心でも、そこから災害に対する意識を高め、それに備えた国の取り組みなどを理解していただければと思います」

全てが驚きの連続。こんな社会見学なら何度でも行きたい!

 地下神殿のような巨大な柱が並び立つ地下空間は、実は、首都圏外郭放水路のごく一部。洪水を取り込む直径30m、深さ60mにおよぶ5本の巨大立坑をはじめ、地中深く6.3kmにわたって走る直径10mの地底トンネル、重量500トンの柱が59本もそびえるマンモス水槽(ここが地下神殿に見える人気の観光スポット)、そして、毎秒200tの水を排水する14000馬力タービンなど、そのすべてが想像を超えるスケール。日本の先端技術を駆使した世界最大級の施設なのです。
 ただ、当日の天気や気分によって、予約申込を行ったものの、見学会の当日、欠席する人も多いのだとか。
 一方、予約が必要なことを知らずに施設を訪れ、せっかく足を運んだのに、見学できない人も多いのだそうです。ふたを開けてみたら、定員まで余裕がある、という場合でも、予約がいっぱいで見学会への参加を断念した人との公平さを保つため、また、飛び込みを受け入れていたのでは、収拾がつかなくなるため、予約のない人の見学は一切、受け付けていないとのことです。
 参加したくても、参加できない多くの人がいるのですから、当日のキャンセルはぜひ避けるようにしたいものです。

首都圏外郭放水路

地下に進むと、徐々に気温が下がりいかにも地下帝国の迷宮にたどり着いたというムードが漂ってきます。

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