埼玉でうどんといえば、加須市の「加須うどん」。江戸時代、不動尊総願寺の参拝客へのふるまいから始まったこのうどんは、今では県を代表する名産品の一つとなっています。現在、町には30店ほどの加須うどんの店があります。
北関東では、もともと良質な小麦が二毛作として豊富に収穫されており、昔からどんな家庭にもうどんを打つ麺台がありました。地域に愛され受け継がれてきた味わいは、今では全国にファンを持つようになっています。
加須うどんの特徴は、なんといっても、そのコシと喉越し。うどん専用に開発された小麦粉「あやひかり」や、農林61号などをブレンドしながら、しっかりとこね上げて作るため、芯まで茹でても、コシがあり、しかも、つるりと喉越しもなめらかです。
寛政時代創業の老舗・岡村屋の九代目、岡政敏さんは、
「コシがあるように見えても、芯が残っているだけで“歯ぬかり”するのは、本当のコシではないんです。しっかりゆでてあって、しかも歯ごたえがいいのが、本当のコシです」
と話します。歯ぬかりとは、噛むと歯にぬかるようにくっついてしまうこと。しっかり打たれているうどんは、かみ切ったときに歯につきません。これが、加須ならではの手打ちうどんなのです。
そしてつゆは、濃い色をしたしょう油ベース。出汁のなかにしょう油を入れ、煮詰めてコクを出したものが特徴です。
しっかりと強いうどんだから、つゆもしっかりとした味わいで、互いを引き立て合うことができます。
素朴ながらも豊かな滋味のある加須うどん、冬は温かい“かけ”で、ゆっくりと噛みしめて味わいたい美味しさです。 |