埼玉で味わう逸品 ほかほかの定番、冬のうどん。

VOL.1地元産の小麦で作るコシの強い滋味加須うどん

 埼玉でうどんといえば、加須市の「加須うどん」。江戸時代、不動尊総願寺の参拝客へのふるまいから始まったこのうどんは、今では県を代表する名産品の一つとなっています。現在、町には30店ほどの加須うどんの店があります。
 北関東では、もともと良質な小麦が二毛作として豊富に収穫されており、昔からどんな家庭にもうどんを打つ麺台がありました。地域に愛され受け継がれてきた味わいは、今では全国にファンを持つようになっています。
 加須うどんの特徴は、なんといっても、そのコシと喉越し。うどん専用に開発された小麦粉「あやひかり」や、農林61号などをブレンドしながら、しっかりとこね上げて作るため、芯まで茹でても、コシがあり、しかも、つるりと喉越しもなめらかです。
 寛政時代創業の老舗・岡村屋の九代目、岡政敏さんは、
「コシがあるように見えても、芯が残っているだけで“歯ぬかり”するのは、本当のコシではないんです。しっかりゆでてあって、しかも歯ごたえがいいのが、本当のコシです」
と話します。歯ぬかりとは、噛むと歯にぬかるようにくっついてしまうこと。しっかり打たれているうどんは、かみ切ったときに歯につきません。これが、加須ならではの手打ちうどんなのです。
 そしてつゆは、濃い色をしたしょう油ベース。出汁のなかにしょう油を入れ、煮詰めてコクを出したものが特徴です。
 しっかりと強いうどんだから、つゆもしっかりとした味わいで、互いを引き立て合うことができます。
 素朴ながらも豊かな滋味のある加須うどん、冬は温かい“かけ”で、ゆっくりと噛みしめて味わいたい美味しさです。

今回、「beside」が選んだのは、加須うどんの2店。岡村屋の岡政敏さん(右)と、子亀の岡戸知幸さん(左)に、KONDOグループ広報の大塚より認定証をお渡ししました。

まだまだあります!KONDOグループ社員のイチオシ店
店名 所在地 電話 ひと言コメント
うどん処 陣屋 比企郡川島町曲師16 049-297-5270 うどんが独特で、肉汁がお勧め!
藤店(ふじだな)うどん(本店) さいたま市西区三橋6-14-7 048-624-2509 「肉汁うどん」が美味しい
藤店うどん 川越市新宿町4-1-5 049-247-7887 11時から13時ごろまでは超混んでいる
うどん・ふみ 狭山市入間川4-1-31 04-2954-4329 知る人ぞ知る、狭山の名店
うどんきざき ふじみ野市池上1-26 049-263-4993 コシのあるうどん。お勧めは「天もりうどん」
うどんてつ 川越市久下戸2881 049-235-3631 他の料理の種類も豊富。素朴な味でとっても美味
袋屋 さいたま市西区中野林202-3 048-624-2968 量が多く、てんぷらが美味しい
越生庵 甚五郎(じんごろう) 入間郡越生町小杉10-1 049-292-5945 お勧めは「極楽うどん」
のじ 狭山市柏原3623-5 042-952-3094 かき揚げがお勧め。お店の方の笑顔も最高です!
訪ねてみたい加須の名店
岡村屋
吊し干しの技法が光る、真似のできない老舗の味

創業200年、まさに加須うどんの歴史的存在の岡村屋。「味一筋、手抜きはいっさいしない」というご主人・岡さんの職人技が光ります。
 麺は、打ったうどんを数時間吊して干す、この店独特の製法。こうすることでうどんに含まれる水分をコントロールし、引き締まって、より歯ごたえのあるうどんに仕上げるのです。
「この製法は、打つ段階で少しでも手を抜くと、吊したうどんが切れてぼとぼとと落ちてしまいます。コシが弱ければすぐに切れてしまうのです」
 だから、量産はせずにひとつひとつを丁寧に作ることを最優先にしている、と岡さん。
 冬に人気のメニューは、肉南蛮うどん。小間切れではなく、豚のロース肉が2枚、しっかりと乗っていて、満足度二重丸。しょう油ベースのつゆとの相性も抜群です。
 地元の人々に愛され続けているのは、60年続く定番のイカ天うどん。この店で「天ぷらうどん」といえば、エビ天ではなく、このイカ天。プリッとしたイカとサクサクの衣は、うどんとの歯ごたえの相性がピッタリ。
 最近の若い人は、コシのある美味しさがだんだんわからなくなっているのが残念、と岡さん。
「柔らかい食べ物が好まれる傾向ですが、コシのあるうどんの美味しさも、忘れないでほしいですね」。
 長く、うどん文化を伝え続けていただきたい、伝統あるお店です。

所在地
加須市不動岡2-6-40
電話
0480-61-0751
アクセス
電車/東武伊勢崎線・加須駅より徒歩15分 
車/東北道加須ICよりR125経由、
  熊谷・行田方面へ10分
営業時間
11時縲鰀14時、17時縲鰀19時
定休日
月、第3火曜(定休日が祝日の場合は営業)
駐車場
10台

 

上/ロース肉が大満足の肉うどん(850円)と、下/60年続いているイカ天うどん(600円)

藍ののれんが風情あるお店入り口

店内。奥にはお座敷もある

陰干しで引き締まったうどんを切る

手打ちうどん 子亀

手前・冬に人気のあつあつ鍋焼きうどん(1230円)。奥・元祖、冷汁うどん(570円)

お座敷のコーナーもある広い店内

子亀外観。広い駐車場スペースがある

一日120縲鰀130食を一人で打つ岡戸さん

一日120縲鰀130食を一人で打つ岡戸さん

喉越しにこだわる、「冷汁うどん」発祥の店

 加須ならではの名物「冷汁うどん」。味噌、ごま、砂糖をベースにしたつけ汁にきゅうりや薬味を入れ、うどんをつけていただく食べ方です。子亀は、この冷汁うどん発祥の地として、知れたお店です。
「もともと冷汁は、加須の農家ではどこでも作る家庭料理でした。それを地元の名産品にできないかと、磨きをかけて商品化したのです」と、三代目店主の岡戸知幸さん。今では、他店でも冷や汁をメニューに加えるようになり、すっかり“加須の味”になりました。甘めのこっくりとしたごま味噌たれにつけて、つるりとすするうどんの喉越しは、やみつきになることうけあい。
「うどんはコシ、と言いますが、ただ固ゆでしてあるのが、コシのあるうどんではありません。生ゆでではなく、しっかりと火を通しても、噛みごたえがあるのが、本来のコシ」と、岡戸さん。
 柔らかいけれど、歯ごたえがある。そういううどんだからこそ、喉越しの良さが際立ちます。
 冬のおすすめ人気は、鍋焼きうどん。一人前のコンロに乗った土鍋から、最後まで熱々をいただけます。味が染みるまで煮込んでも、煮くずれせずにしっかりと歯ごたえが楽しめるのは、加須うどんならでは、です。

所在地
加須市諏訪1-15-6
電話
0480-62-2876
アクセス
電車/東武伊勢崎線・加須駅より徒歩7分
車/東北道加須ICよりR125経由、熊谷・行田方面、加須駅入り口近く
営業時間
11時縲鰀15時、16時縲鰀20時
定休日
木曜
駐車場
22台

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